紫にほふ釜炒り製「ゆめわかば」と「ふくみどり」
『紫にほふ』・・・ 手摘み茶の最高品質を追求した狭山茶
煎茶に続き、微醗酵茶でも『紫にほふ』用に再製を行いました
【ふくみどり仕上げ工程】
微醗酵茶で、荒茶を複数回 製茶しているのは「ゆめわかば」と「ふくみどり」の2品種ゆえ、二種類がラインアップされます。
【ゆめわかば】
摘採は4月26日、極めて若い芽を摘んだので、端正なルックスです。手摘み時期が早かったためか、少々褐色を帯ています。久し振りの再製・・・ 火入れが落ち着いてから試飲したところ、明らかな蒲萄の香気にビックリ! 抽出液が喉を通った瞬間から、味と香りが広がります。マスカットというより、ピオーネかな? 紫色の皮を持った、濃厚でコクのある香りを思い起こします。
【ふくみどり】
製造は4月25日、今期手摘みの第1号。とにかく白豪が目立ち、他にない個性的な外観です。生茶葉でも、長目の生長芯が白毛にびっしりと覆われているのが判る、特別な品種です。口に含めば、このうえなくスムースに喉を滑り落ちます。透明度の高い味は、この品種の長所であり、そのせいもあって、香気の余韻が極めて長く感じられます。 今回のロットは早い摘採が奏功し、柑橘系のフルーツ、バニラ、様々な萎凋香が口中に響き渡ります。
【紫にほふパッケージ】
「嗅覚には2つの経路があり、それは『オルソネーザル・・・ 鼻から嗅ぐ香り』『レトロネーザル・・・ 口の中から立ち昇ってくる香り』である」とは、新聞の文化欄「鼻腔くすぐる絵画十選」にあった文です。常々、茶の香りには、のど越しで感じ取るものと、口中の余韻で確認できるものとの、二種類があると気づいておりました。特に萎凋香は後者で判定するものが圧倒的ですが、それは品種によっても様々です。「ゆめわかば」はオルソネーザルに近く、鼻あるいは喉で感じ取るものが多く、とても香気が分かりやすい品種です。一方「ふくみどり」は完全にレトロネーザルで、口の中に立ち昇ってくる香気が極めて鮮やかで、しかも息が長い・・・ 貴婦人をイメージする、お洒落れな品種です。今回の『紫にほふ』は、図らずも新聞記事の内容を証明するかのように、対照的な内質でした。ありがたいことに、茶の香気に対する理解が、一次元上の段階に進めた気がします。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎