「在来種」の再製

「やぶきた」が誕生し、茶園の品種化が始まってから約100年。狭山にもまだ在来種が残されています。

卸先から要請があり、在来種の再製を行いました。

在来種 荒茶

「在来」には品種物の実生と「ビンカ種」と呼ばれる本在来種の二種類があり、これは後者。入間市根通り茶園の一等地にある茶業公園東側に広がる間野善雄氏所有の在来茶園から産出されました。今や貴重品かもしれません。

 

篩分け

煎茶には不向きの「頭」と呼ばれる、大きく育ちすぎた部分の除去作業・・・ 試験仕上げなので、ほぼ手作業です。

 

品種物に比べ含有量が多く、平たい形状。この部分は味に繊細さがなく焙茶原料として使用します。

 

一番特徴のある出物が白い棒の部分でしょう。表面の皮が剥けきらず、棒につながったものが目立ちます。これは品種物にも その実生にも、ほとんど見られません。繊維質が多い、あるいは強いのかもしれません。

 

火入れ

少量ゆえ、火入れ専用の「ほいろ」を使用しました。

 

完成品

黒い軸が目立たず、茶葉の光沢も少ない個性的な外観。蒸し度を抑えた「正統蒸し」ゆえ、「本在来種」の個性をよく留めています。江戸期の宇治? 800年前の栄西? あるいは1,300年前の最澄?・・・ このルーツを辿ればどこに行き着くのでしょうか。以前、嬉野の背振山から移植したという在来種をみた事があり、狭山のものとはかなり異なる形状だった記憶があります。長い栽培年月を経て、各地で独自の進化を遂げてきた可能性があります。茶産地狭山の「本在来種」・・・ 平成が終わろうとしている今・・・ 大切に維持すべき「種」かもしれません。

 

狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎