宇治茶の実力・・・「ごこう」~ 貴婦人のかおり
幻の香気・・・ 宇治茶「ごこう」は本当に「貴婦人のかおり」でした !!
昨秋「シングル オリジンティー フェスティバル」で会った青鶴茶舗 フローラン・ヴェーグさんが京都 吉田山大茶会にて私達の真正面に出展されており、宇治茶「ごこう」が目に留まりました。和束産「露地もの」との事。
【和束産ごこう】
1980年代初頭、弊社先代が全国品評会で「ごこう」の荒茶を落札。その気品ある香気に感嘆、「貴婦人のかおり」と称し、苗木を求めて上洛。狭山で「ごこう」の栽培が始まりました。残念ながら 気候風土の違いか、その芳香が再現されることはなく、幻の香気でした。
【ごこう外観】
碾茶品種でもあり、紺がのった色沢が美しい・・・ 狭山との生茶葉の差を見せつけられいる思いです。繊維質の多い狭山では殺青をキチンと施すには蒸し度を上げる必要があり、細かい形状で光沢が失われがちの外観にならざるをえません。 飯田辰彦 著『日本茶の「源郷」』に掲載された 生茶葉の写真を見るだけでも、葉質の違いは歴然です。
【ごこう茶殻】
蒸し度を上げる必要のない柔らかな葉質ゆえ、茶殻も美しい。それでも、きちんと蒸し抜けているのが判ります。一番驚いたのは紺色に近い色沢の下葉・・・ こちらでは褐色に近いのに・・・ 柔らかな葉質の影響はここにも! 茶葉の硬化がゆっくり進むのでしょう・・・ 適期摘採の期間が長そうです。
【ごこう水色】
若目の蒸しがもたらす澱のない澄んだ抽出液がのどを滑り降りると、口中に鮮やかな味が広がります。そしてその中に発見しました・・・ 例えれば 真っ暗なステージの中央、突然のピンスポットに妙齢の麗しい女性が浮かび上がるかのように、細く鋭い香気が立ち昇ります。そして、いつまでも響くその余韻。湯冷ましにたっぷりの時間をかけ湯温を下げても、その香気は衰えることを知りません。これが「貴婦人のかおり」・・・ 茶業界に入って30年、やっとたどり着くことができました。
茶摘み唄「色は静岡 香りは宇治よ 味は狭山でとどめさす」色と味については納得していたけれど、今回 香気の宇治茶に得心が行きました。なるほど、これなら あえて萎凋する必要はないかも・・・ 逆にいえば、狭山では萎凋香が必要条件なのでは?
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎