古都の喫茶室 〜 心樹庵 in 奈良市

関西ならではの喫茶室にて、古都での茶を満喫してまいりました。

今回 上洛の主題は坂田完三先生にお会いすること。そして桑原善助商店を訪問すること。ありがたくも 平安清昌氏の京焼き工房の見学まで実現し、この上なく満ち足りた旅でした。さらには前年 近くまで訪れながら、どうしても行けなかった場所への訪問も叶いました。

心樹庵 外観

それは飯田辰彦著「日本茶の回帰」で取り上げられていた、中国茶を中心とした喫茶室「心樹庵」。昨年の地紅茶サミット「ならではの奈良」パネルディスカッションでご一緒した米山穂高さんの店。奈良市中心街に程近い、閑静な町屋街にありました。店名を知らなければ、そこが茶を商う店舗とは気付かないほどに、さりげなく たたずんでいました。

 

店内も外観同様、落ち着いた雰囲気。急須、茶壺、蓋碗、陶器、磁器、ガラス器・・・ 米山さんの好みと趣を一にする仕事道具達・・・ 壮観です。

 

太平猴魁(たいへいこうかい)昔風

以前ブログで取上げたのは「現代風」のもので、こちらはオーソドックス製法のもの。茶葉に布目がついており、基本的な製茶方法に変更はないのかもしれません。だたし、味も香気も「つくり方でこんなに変わるの!」とびっくりするほどの違いがありました。

 

水  色

数多ある器の中から、茶種ごとに最適な茶器を選び、呈茶いただけるのでしょうか・・・ 碗底に描かれた花が映えます・・・ 茶器も水色も そのバランスも美しいためでしょう。視覚でも茶を味わいます。

 

鳳凰単欉蜜蘭香(ほうおうたんそうみつらんこう)

高名な広東省の青茶。初めての拝見。いままで経験したものとは全く風味の異なる茶。名前どおりの 甘く濃厚な香味が絶えない、きわめて 特長がわかり易い青茶です。

 

水  色

醗酵度合いの高そうな、濃度ある抽出液。煎を重ねても、いつまでも続く芳醇な香気と濃厚な味・・・ どこまで深いのだろうか 中国茶の奥行きとは・・・ 青茶おそるべし!

 

萬古焼 横手急須

一見、常滑の朱泥かと思いきや、なんと萬古焼! 萬古といえば紫泥の印象ながら、なんて優美な・・・ 開口部が大きく、使いやすそう。萬古急須が大好きで、作家に制作を依頼したものなのだとか。

以前より 萬古は茶が最もおいしく淹れられる急須とされ、備前屋では 店頭での接客にも 仕入れの試飲にも萬古の宝品を愛用しています。茶器の好みに共通項目を発見・・・ ちょっぴり悦ばしい。

それにしても、自らの気に入ったように作陶までさせてしまう米山さん。こんなところにも 喫茶を手がける方の、茶に対する並々ならぬ情熱を感ぜずにはおれません。

 

狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎