備長炭の狭山茶火入れ

緑茶にも、それぞれの季節にふさわしいものがあります。

その最たるものが狭山萎凋香品種のルーツ「さやまみどり」。何者にも代えられない個性的な萎凋香を持ち、強い火入れを好む、個性的な狭山茶。味も香気も、この上なく濃度の高いこの品種には冬が似合います・・・ 萎凋香のあるものは特に!

【備長炭に点火】

限られた数量しか手に入らない「さやまみどり」を生かすため、火入れに備長炭を使用。前年使用した消し炭に、ガスバーナーで点火・・・ といっても15~20分間はかかりますが。

 

【米澤式火入れ機】

炭皿を火入れ機にセット。使用するのは昭和30年代に製造された、通称「がら」と呼ばれる 狭山固有の火入れ機。もともとはガス用だったものを、メーカーで炭火用に改造してもらった唯一無二の大切な「道具」です。

 

【炭火入れ工程】

炭皿上部の火入れ機本体は開口部の広い円筒形。中心にシャフトが通り、2本のブラシが茶葉を撹拌しながら火入れを行います。炭火の威力は絶大で、茶温は短時間で100℃を突破。通常の炭に比べて 備長炭が優れるのは、温度の上昇が早い事。安定した燃焼が維持できること。そのとき、備長炭の発する香気がなんとも素晴らしく、さらに揮発した「さやまみどり」の萎凋香と一体になって、瞬く間に工場中が芳香に支配されます・・・ いやがうえにも気持ちが盛り上がる、茶業者至福のひとときなのです。

 

【ねだまし工程】

火入れ機から取り出してもまだ火入れは継続中。薄く広げて常温にもどるまで時間をかけます。この「ねだまし」と呼ぶ、大切な炭火の後工程は同業の先達から教えてもらったもの・・・「寝騙し」とでも書くのでしょうか?

 

【炭火入れ狭山茶外観】

軸が短く、葉肉の厚い「さやまみどり」。さらにブラシで摺られ、白ずれを起こし、あか抜けしない、いささか無骨な外観。しかしながら茶葉を嗅ぐだけでも、特別な香気を感じるほどに個性的な茶です。

 

【炭火入れ狭山茶水色】

深蒸しではない、正統蒸しの茶葉のため、折りはなく、中々に美しい抽出液。「さやまみどり」の萎凋香は嗅覚だけでなく、味覚でも感じる、香味一体で楽しむ萎凋香品種。しかも強い火入れに応答して 本領を発揮するという、きわめて稀な日本茶です。「さやまみどり」を選抜して、農林登録を果たした狭山の先人に感謝しつつ、萎凋香と炭火入れの技術と共に、護り伝えたいと考えています。

 

狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎