白棒

今シーズン最後の新茶商品が仕上がりました。その名も『白棒』。とりたてて特殊なものではないけれど、30年以上ご用命をいただく、特別な商品です。

 

くき茶ながら、原材料は茶葉が緑に色を返す前後の、摘採の早いものばかり。出物が少ない時期の荒茶が対象ゆえ 、毎年の新茶初期には 常にこの商品を考慮に入れながら再製作業を行っています。

 

『白棒』外観

使用するのは扁平した「くき」だけ。水分がまだ多く含まれている、硬化始めて間もない若い軸です。淡い緑色をまとった丈の短い、平たい「くき」・・・ 中央がつぶれ、シワの寄った個性的なルックス。黄ばんだもの、緑色が濃いもの、茶渋が付着したもの・・・ 様々ながら、第一印象は白い棒そのものです。

再製の主眼は いかにして本茶分を取り除くか・・・ 通常とは真逆の作業は 色彩選別機に負担を強いながらの工程となります。元の「くき」から商品になるのは10%未満。量が少ないので、火入れには「ほいろ」を使用。出物とはいえ、これはこれで 貴重な狭山茶です。

 

『白棒』抽出液

「これで 色が出るの?」と心配になる外観だけれど、きちんと抽出します。淡く、黄ばんだ緑色の水色。尖った青さが気になる香味は 火入れによって 品格を感じさせるものに生まれ変わります。くき茶の青い風情を残しながらも、透明感があって 豊かな香気。確かに新茶を感じさせる さわやかな香りです。

くき、棒、白折、雁ヶ音・・・ 煎茶にならない硬化した軸の部分には 様々な呼称があります。雅な表現とは正反対の『白棒』は首都圏にありながら あか抜けない印象のある、狭山茶にふさわしい呼び名だと思いませんか・・・?

 

狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎